2023年11月号

健康とすまいづくり

 戦前の日本において、不良住宅地区の改良の際に特に重視されていたのが,衛生問題の改善であった。 当時は、住まいと健康についての研究・啓蒙活動も盛んに行われていたのである。しかし,戦後復興から高度経済成長期にかけて、公的住宅の住戸平面が標準化され日照を確保する住棟配置も定型化するなかで、建設戸数のみが社会の主要な関心事となり、住宅と健康の関係について議論される機会は減少していった。
 ところが近年になって、超高齢化社会の到来、地球環境問題等の新たな課題への対応の中で、エネルギー消費を抑えながら何歳までも健康に暮らすことのできる住宅が、改めて重要な社会的テーマとなっている。
 さらには、ソーシャル・キャピタル論等のエビデンスに基づく研究により、孤立を避ける社会的つながりが健康寿命を伸ばすことが明らかになってきた。そのため、地域の中に空き店舗・空き家等を活用した交流拠点を設けることで、健康をテーマとするまちづくりも各地で取り組まれている。
 本特集では、誰もが健康に暮らせる住まいとまちのあり方について検討してみたい。

 

企画編集:大分大学理工学部理工学科建築学プログラム准教授 柴田 建

 

住まいの温熱環境と健康の関係              
 慶應義塾大学理工学部 教授 伊香賀 俊治

ポストコロナのウェルネスとまちづくり   
 大分大学理工学部理工学科建築学プログラム准教授 柴田 建

鳥取県独自の住宅省エネ基準の策定(とっとり健康省エネ住宅)の取組
 鳥取県生活環境部くらしの安心局住宅政策課 槇原 章二

多世代が安心して暮らし続けられる住まいづくり〜高齢者の健康寿命の延伸の観点から〜
 独立行政法人都市再生機構ウェルフェア総合戦略部戦略推進課長 中島 正樹

秋田県秋田市におけるエイジフレンドリーシティ行動計画の実践
 −縦割りを解消し、住民のリソースを活用するフレームワーク−
  東海大学建築都市学部建築学科 特任准教授 後藤 純

住んでいるだけで健幸になれるまちづくり
 筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センター 准教授 田邉 解
 筑波大学スマートウエルネスシティ政策開発研究センター 教授 久野 譜也

歩きたくなる住宅地のプレイスメイキング(ウェルネスシティつくば桜)
 −スマート・ウェルネス・コミュニティをテーマに開発された住宅地のデザイン+マネジメントの実践−
  潟vレイスメイキング研究所 代表取締役 温井 達也

石巻市災害復興住宅居住者の体力傾向と住宅環境の課題
 −ノルディック・ウォークによる健康増進とつながりづくりを通して−
  大分大学福祉健康科学部 准教授 三好 禎之