2016年3月号

東日本大震災から5年

 過去に例をみない規模の大地震とそれに伴う津波により東北地方3県をはじめとする広範囲に甚大な被害をもたらした、東日本大震災からはや5年の月日が流れました。今日もなお、多くの方が仮設住宅での生活を余儀なくされ、また福島県では原子力発電所の事故による放射能汚染により、住み慣れた故郷から避難せざるを得ない方々がおられます。
 本誌では震災の発災から1年後の2012年3月号において「仮設住宅」、2年後の2013年3月号では「災害公営住宅」に焦点を絞った特集を企画し、そして3年後は「東日本大震災から3年」と題して特集をお送りしてまいりました。本特集では、次世代に亘って震災の記憶を風化させないという思いを新たにし、発災から5年を経た今、これまでの取組みをレビューし、そして今後の展望について、自治体関係者はじめ、事業に携わった方々より、報告いただく機会としました。この機会に前回特集と読み比べていただけますと幸いです。
 平成28年1月現在、復興庁によると本年度末までに災害公営住宅は計画戸数の6割近くが完了する等と公表されており復興への更なる加速に向け、厳しい環境下でご苦労されている関係者の皆様に深甚の思いを新たにします。この5年の月日は自治体間あるいは個人の間にも復旧そして復興の格差という新たな課題を生じ、被災者あるいは被災地が抱える課題はますます複雑かつ深刻な状況となっていることは否めません。これからはそうした個々の事情に応じた、きめ細やかな、言わば量的な復興から質的な復興へと変わっていく時期に及んだと言ってもいいのではないでしょうか。
 東日本大震災以降も各地で数多くの自然災害が発生し、住まいを失う、あるいは移転を余儀なくされる方々に対し、ハード、ソフト共にあらゆる手立てが尽くされているところですが、今後、我が国は人口が縮小する方向に向かい、住まいに係る課題が今後ますます顕在化してくるものと思われます。被災地の復興に向けたこれまでの取り組みはどうだったのか、それをどう評価するのか、計画が進むにつれて見えてきた課題も多々あると思います。そうしたことを検証することが、今後の復興への道筋を示すと同時に被災地のみならず、これからのまちのあり方や住まい方を考えるうえで多くの知見となるものと考えられます。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

 

雑誌『住宅』における東日本大震災住宅の5年間
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

5年間の災害公営住宅供給にかかる取り組みについて
  国土交通省住宅局住宅総合整備課

住宅の復旧・復興におけるプレハブ建築協会の役割
 一般社団法人プレハブ建築協会 専務理事 合田 純一

5年間の住宅復興の取組みと残された課題
  岩手県県土整備部建築住宅課

5年間の住宅復興の取組みと残された課題
  宮城県土木部住宅課・復興住宅整備室

供与5年目を迎えた応急仮設住宅の取組と残された課題
  宮城県保健福祉部震災援護室

震災から5年の歩みと今後について 〜5年間の住宅復興の取組と残された課題〜
 福島県土木部建築住宅課

5年間の住宅復興の取組みと残された課題
  茨城県土木部都市局住宅課

東日本大震災からの復興支援に係る様々な取組み
 独立行政法人都市再生機構 本社震災復興支援室 森岡 拓也

被災者の受け入れへの取組と今後の課題
  埼玉県都市整備部住宅課

被災者の受け入れへの取組みと今後の課題
  東京都都市整備局都営住宅経営部・住宅政策推進部

借り上げ仮設住宅の実態と今後の課題
 国土交通省国土技術政策総合研究所住宅研究部住宅計画研究室主任研究官 米野 史健

被災地における地域公共交通の復旧プロセスと公共交通施策
 福島大学経済経営学類 准教授 吉田 樹

仮設住宅支援の立場からみた震災復興の5年
 〜仮設の縮退期をむかえて復興コミュニティ・デザインを振り返る〜
  東北工業大学工学部建築学科 准教授 新井 信幸

福島を見続けての5年‐ふくしまのこれまでとこれから
  福島大学行政政策学類 准教授 丹波 史紀

つくば市で受け入れている原発避難者への対応について
 ‐多様な支援者によるセーフティネット作りの視点から‐
  筑波学院大学 社会力コーディネーター 武田 直樹

 

住宅だより海外編 ‐国際居住年記念事業 海外の居住環境改善活動報告‐

国際NGOの災害住宅支援:ハビタットの住宅修繕事業を事例に
 特定非営利活動法人ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン支援業務部マネージャー 
  山本 真太郎