2021年3月号

周辺を巻き込んだ団地再編

 高度経済成長期の住宅不足に対応して供給された公営住宅、あるいは日本住宅公団、地方住宅供給公社による住宅の団地が建替え期を迎えている。既存の事例の多くは同一敷地での建替えであるが、周辺の公共用地や公共施設なども含めた一体的な再編により建替えを行った事例も見られる。こうした周辺を巻き込んだ団地再編には、周辺環境も含めた居住性向上や、連鎖的建替えによる居住者の負担軽減という利点がある。さらに、民間企業が参画することにより再編の自由度が高まる。一方で、関係者が増えるほど全体調整は困難になるという側面もあろう。
 本特集前半の3編は、団地再編の展望、関連する法制度および事業に関する総論である。後半の9編は、周辺を巻き込んだ団地再編の事例紹介である。事例は、公営住宅を中心に、公団、公社の住宅、そして分譲住宅も含めた。前後半の間には、編者が掲載事例の整理と分析を行った。また、「広場」では、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)を活用した公的住宅整備事例を紹介した。本特集が、各地で進む団地建替えの参考となることを期待したい。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・准教授 樋野 公宏

 

団地再生を敷地分割から地域拡大まで総合的に考える‐団地再生委員会での議論を発展させて‐
 千葉大学名誉教授 小林 秀樹

公営住宅の再編に係る制度の変遷について
 国土交通省住宅局住宅総合整備課審査係長 四日市 拓哉

UR賃貸住宅の団地再生手法の解説
 独立行政法人都市再生機構ストック事業推進部

周辺を巻き込んだ団地再編事例の整理と分析
 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・准教授 樋野 公宏

都営多摩ニュータウン諏訪団地:学校跡地を種地とした連鎖的建替え   
 東京都立大学 松本 真澄

小和田住宅外複合施設の取り組みについて:既存団地の集約と市営住宅の複合化事業
 茅ヶ崎市建設部建築課市営住宅担当 中田 智大

新佐竹台住宅(大阪府吹田市) ‐公社住宅跡地に市営住宅5団地を集約‐
 (株)市浦ハウジング&プランニング 小浪 晋

近鉄大福駅周辺地区のまちづくり
 ‐県営住宅の建替えに伴うまちの機能の複合化及び多世代交流の場づくり‐
  奈良県地域デザイン推進局住まいまちづくり課 鈴木 和彦

川崎市大島4丁目店舗・市営大島住宅 ‐区分所有店舗の借地権と市の底地権を交換‐
 潟^カハ都市科学研究所 安原 厚志

店舗併用型の複雑な権利関係の克服と隣接公園の移設による団地建替え事例
 旭化成不動産レジデンス潟}ンション建替え研究所副所長 大木 祐悟

牟礼団地分譲建替:隣接するUR賃貸住宅の再編により生じた土地(空地)を活用した仮住まい不要の直接移転型分譲住宅の建替え
 独立行政法人都市再生機構東日本賃貸住宅本部多摩・神奈川エリア再生部 名取 浩介

西大和団地における団地再生事業 ‐財務省および和光市所有の隣接地を種地として‐
 独立行政法人都市再生機構東日本賃貸住宅本部ストック事業推進部事業第5課担当課長 木村 仁紀

東京都住宅供給公社中野住宅の一体的施行による建替え
 ‐土地区画整理事業と市街地再開発事業の一体的施行‐
  潟Aール・アイ・エー会長 宮原 義昭

 

広場

PFI活用による公的住宅整備       
 東京大学大学院工学系研究科 齋藤 隆太郎

 

書評

「仮住まい」と戦後日本 実家住まい・賃貸住まい・仮設住まい
 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻・准教授 樋野 公宏