2018年5月号

空き家問題を解くパートナーシップ

 本誌2013年1月号で「自治体による空き家対策」を特集してから5年が経過した。当時は、空き家の安全面、景観面などの外部不経済が注目されるようになり、各地の自治体が空き家の適正管理関連条例を相次いで制定していた時期である。条例を制定した自治体数は2014年10月には400を数えた。
 こうした自治体の動きに押されるように、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を2014年11月に公布、翌年2月に施行した。法律を受けて、既に約半数の自治体が空家等対策計画を作成し、4割近くが法定協議会を設置している(2018年3月末見込み。国土交通省・総務省調査)。
また、管理状態の著しく悪い「特定空家等」を指定し、立ち入り調査や、助言・指導、勧告、命令、さらには代執行といった措置を行えるようになった。加えて、特定空家等の指定により、空き家が放置される一因とされてきた固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外できるようになった。こうした措置により空き家問題への対応はある程度進捗したと考えられるが、自治体だけで取り組むことの限界も認識されつつある。
 そこで本号では、空き家対策に向けた自治体、地域住民、民間企業、NPO、各種専門家等によるパートナーシップ焦点を当てる。パートナーシップによる取り組みは、空き家問題に限らず、様々な地域課題を解決する上で不可欠である。
 特集前半は、研究者や法律家等による国内外の事例を踏まえた論考である。後半では、自治体と連携して空き家再生を進めるNPOや公益法人、国の「先駆的空き家対策モデル事業」に採択された自治体等から、現場の状況や課題を紹介していただく。本特集が、各地で空き家問題に関わる方々の参考になることを期待したい。

 

企画編集:東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授 樋野 公宏

空き家問題を解くパートナーシップ
 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授 樋野 公宏

空き家問題の法的概況
 松田綜合法律事務所 弁護士 佐藤 康之

大規模住宅団地の建物除却・減築の協同的実施
 〜ベルリン市郊外部マルツァーン・ヘラーズドルフ団地での取り組みから〜
  東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻住宅・都市解析研究室 博士課程2年 馬場 弘樹

横須賀市の空き家対策の現場から
 〜地域コミュニティと協働で推進する空き家対策の状況と現場感覚での問題考察〜
  横須賀市都市部まちなみ景観課長 島 憲之

現場からの報告/NPOつるおかランド・バンクの取り組み
 〜中心市街地の空き家・空き地の連鎖的再生を目指す専門家プロボノ集団〜
  特定非営利活動法人つるおかランド・バンク 理事長 阿部 俊夫

現場からの報告/尾道空き家再生プロジェクトによるエリアリノベーション
 潟Rコロエ一級建築士事務所/NPO法人尾道空き家再生プロジェクト理事 片岡 八重子

現場からの報告/大牟田市における空き家対策 
 有明工業高等専門学校創造工学科人間・福祉工学系建築コース 講師 藤原ひとみ

現場からの報告/みんなの居場所「こまじいのうち」の立上げから広がりまで
 社会福祉法人文京区社会福祉協議会地域福祉推進係長兼地域連携ステーション(フミコム)
  係長 浦田 愛

現場からの報告/高岡市空き家活用推進協議会の取り組み
 高岡市空き家活用推進協議会会長 酒井 誠

現場からの報告/岡山住まいと暮らしの相談センターの3年間の取組み
 一般社団法人岡山住まいと暮らしの相談センター理事/事務局長 石田 信治

現場からの報告/NPO法人空き家コンシェルジュの奈良県における空き家対策事業について
 特定非営利活動法人空き家コンシェルジュ代表理事 有江 正太

空き家問題:「つくる時代」から「まわす時代」への転換のための試金石
 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授 大月 敏雄

 

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平成29年度国際居住年記念事業「国際居住年記念賞」の受賞者の決定について
 一般社団法人日本住宅協会