2017年5月号

熊本地震から1年

 2016年4月14日及び16日未明に熊本県熊本地方を震源とする地震が発生し、1年が経過しようとしています。当初は14日に発生したM6.5の地震が本震で、その後に発生したものは余震であり、地震の規模でそれを上回ることが予想されなかったものの、16日未明にM7.3の地震が発生したことから、後者を本震、前者は前震であったとの見解が気象庁より発表されました。内陸型地震においてこうしたケースは現在の気象庁震度階級が制定されて以来、初めてであったとのことです。
 このように今回の地震が特異な事象であったことから、今後の地震への対応の難しさが指摘されているところです。
 平成29年3月末現在、約4,300戸の応急仮設住宅、約14,600戸のみなし仮設住宅が提供されているところですが、個人の所有される家屋等で全壊または半壊の被害を受けた家屋の解体や撤去について今日もなお、一日も早い復旧・復興に向けて不断の努力を続けている皆様に改めて敬意を表します。
 本特集では、次世代に亘って震災の記憶を風化させないという思いを新たにし、発災から1年を経た今、これまで、そして今後の取り組みについて、自治体関係者はじめ、調査研究を通じて復旧・復興に携わっている多くの方々より、報告いただく機会としました。
 各地で数多くの自然災害が発生し、住まいを失う、あるいは移転を余儀なくされる方々に対し、ハード、ソフト共にあらゆる手立てが尽くされているところですが、今後、我が国は人口が縮小する方向に向かい、住まいに係る課題が今後ますます顕在化してくるものと思われます。
 震災からの復興に向けた取り組みについて、その情報を共有することが、今後の自然災害への備えに資するとともに被災地のみならず、これからのまちのあり方や住まい方を考えるうえで多くの知見となるものと考えます。

企画編集:東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

 

熊本地震からの住宅復興
  東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 教授 大月 敏雄

熊本地震からの復興に向けた熊本県の取り組み
 (応急仮設住宅の整備とくまもと型復興住宅の推進について) 
  熊本県土木部建築住宅局住宅課 課長補佐 折田 義浩

熊本地震からの復興に向けた熊本市の取り組み    
  熊本市都市建設局建築住宅部長 下田 誠至

熊本地震における応急仮設住宅建設に向けたプレハブ建築協会の取り組み
  (一社)プレハブ建築協会 (元)熊本地震応急仮設住宅現地建設本部本部長 菊池 潤

応急仮設住宅‐熊本型D(デフォルト&デザイン)   
  熊本大学自然科学研究科 准教授 桂 英昭

熊本地震・学生による仮設住宅の環境改善 ‐KASEIプロジェクトの取り組み‐
 九州大学人間環境学研究院 准教授 末廣 香織

熊本県益城町における仮設住宅聞き取り調査と復興計画策定状況
 熊本大学 くまもと水循環・減災研究教育センター 准教授 円山 琢也

住民目線で震災をどのように捉えるか ‐熊本県西原村の事例から‐
 兵庫県立大学大学院減災復興政策研究科 宮本 匠

 

トピックス

平成28年度国際居住年記念事業「国際居住年記念賞」の受賞者の決定について
 一般社団法人日本住宅協会

 

広場

法制局の審査机(住宅局関係法令の審査過程あれこれ)その1
 元内閣法制局第二部参事官 山崎 篤男

 

住宅だより海外編

-国際居住年記念事業 海外の居住環境改善活動報告-
 熊本地震における「協働型」の住宅支援
  特定非営利活動法人 ハビタット・フォー・ヒューマニティ・ジャパン 
    熊本地震支援事業コーディネーター 丸山 真実

 

書評

南池袋再開発物語 日本初の一体型再開発は何故できたのか 
 松榮建物株式会社 社長 倉林 公夫

民法改正で変わる住宅トラブルへの対応<契約書と保証書>
 明海大学不動産学部長 中城 康彦