2014年5月号

特集/モビリティのシェアリング

 カーシェアリング、バイクシェアリングなど、これまで、個人で所有し利用してきた交通手段をシェアリングする動きが見られる。カーシェアリングを利用する場合には、自動車を所有するよりも年間の総走行距離が短くなることも指摘されており、環境問題の観点からも注目されている。
 シェアリングは、利用者を限定し登録を行った会員間で、自動車・自転車などを共同使用するサービスとして発展してきた。カーシェアリング、バイクシェアリングには、個人・法人で所有する自動車・自転車の代替としての役割も期待されるが、同時に、これまでは徒歩、タクシー、バスなどが主たる役割を果たしてきた鉄道などの公共交通機関からの端末部分の移動を支える新たな交通機関としての役割も期待される。
 自動車・自転車の代替としての役割は、自家用車を所有する必要がないこと、駐車場を確保する必要がないことからマンション開発とセットで導入される事例も見られ、開発側、(自動車への依存度の低い)居住者の双方にとってメリットも指摘される。現時点では大きな動きとはなってはいないものの、近い将来において、住宅開発等での駐車場設置台数などもカーシェアリングを導入することで、従来よりも少ない駐車台数で計画できるようになると思われ、また、既存の団地等において導入することで、駐車場用地の転用なども期待できる。
 また、端末部分の移動に関しては、通勤などの日常的な利用とともに、観光客などの来街者にとっても、比較的安価で自由に移動できる交通手段の提供が可能となり、街の活性化にも寄与することが期待できる。
 以上のように、シェアリングは、都市政策としても重要な役割を果たす可能性に満ちており、今後の居住のあり方を変えるポテンシャルも持っていると考えられる。
 そこで、本特集では、このような動きが、都市、地域、居住にどのような変化をもたらすのか。行政、事業者、利用者などの声などをとりまとめ、シェアリングの今を解き明かす。

 

企画・編集 岡山大学大学院環境生命科学研究科 准教授 橋本 成仁

 

ドイツにおけるカーシェアサービスの現状と利用実績に基づいた優位性の考察
 ロイファーナ大学客員研究員(北九州市立大学教授) 内田 晃

カーシェアリングの普及から都市における共有・シェアのあり方を考える
 東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授 瀬田 史彦

EU諸国にみる路上乗捨て型EVシェアリングとまちづくり
 名古屋大学客員教授・鞄建設計総合研究所 安藤 章

柏の葉国際キャンパスタウンの取り組み(マルチ交通シェアリング)
 三井不動産株垂フ葉街づくり推進部 浦野 浩司

次世代交通システム〜Ha:moの取組み〜
  豊田市都市整備部交通政策課長 西 和也

岡山市コミュニティサイクル「ももちゃり」の取組み
 岡山市都市整備局街路交通課自転車先進部都市推進担当課長 平澤 重之

 

広場

住宅建築用の良質材生産による地域の林業振興に関する一考察
 ‐木造住宅に対する消費者の認識に関する視点から‐
  京都大学大学院農学研究科博士後期課程 中川 宏治

地域の貴重な社会資本『公営住宅』のさらなる有効活用にむけて
 ‐横浜市営住宅の募集業務にみる辞退発生を抑制するためのトライアル‐
  成城大学社会イノベーション学部 教授 大家 亮子

 

トピックス

平成25年度国際居住年記念事業「国際居住年記念賞」等の受賞者の決定について
 国際居住年記念事業運営委員会事務局

 

書評

近居 少子高齢社会の住まい・地域再生にどう活かすか
 九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門 助教 柴田 建