2013年5月号

特集/計画住宅地は「故郷(ふるさと)」
になりうるのか?

 高度成長期に日本中で開発されたニュータウン。当初に入居した第1世代の高齢化が進行した後に、これからは、第2世代への継承が問題となってくる。今回の[特集2]のなかで藤井氏は、そのような住宅地が今後、第2世代へ「住み継がれる住宅地」と、「捨てられる住宅地」に二分されていくと分析している。この「捨てられる住宅地」対策として、空き家バンク等の取り組みが、特にベッドタウンとして発展してきた郊外部の自治体によって取り組まれるようになってきた。
 それでは、もう一方の「住み継がれる住宅地」として勝ち組になれれば、もはや問題はないのであろうか? 実際に第2世代への継承が進んでいるニュータウンでは、大規模な再開発や個別の住宅の建て替えなどが活発に行われており、開発から半世紀が経過し古ぼけてきた風景が新たに書き換えられつつある。
 そこから、単なる「居住の継承」の次の課題が浮かび上がってくる。ニュータウンで入居からこれまで住み続けてきた家族の歴史,集住の生活史によりソフト・ハードの両面で住宅地に蓄積されてきたものは、次の世代にとって何の意味もないのであろうか? 住宅地の継承の理想的な姿とは、リセットを繰り返し、常にぴかぴかの街であり続けることなのであろうか?
 今回の特集では、「故郷(ふるさと)」をキーワードとすることで、住宅地で集まり暮らすことによって蓄積してきた何らかの良きモノ・コト・関係を、次世代へ継承する可能性について考えてみたいと思う。

企画・編集:九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門 助教 柴田 建

 

 

ニュータウンを、いかに「故郷」として継承するか?
 九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門 助教 柴田 建氏

住み継がれる住宅地、捨てられる住宅地
 慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問) 藤井 多希子氏

まちの歴史を語り継ぐこと:住宅営団三和町での取組み
 埼玉大学名誉教授 在塚 礼子氏

48年目のこぶし団地 ‐労働組合の作った住宅地
 東京工芸大学工学部建築学科准教授 森田 芳朗氏
 九州大学大学院人間環境学研究院博士課程 橋田 竜兵氏

「ユイマール」で子どもたちの故郷を育む ‐沖縄・浦添ニュータウン‐
 九州大学大学院人間環境学府・博士課程 梶原 あき氏
 九州大学大学院人間環境学研究院都市・建築学部門 助教 柴田 建氏

「当たり前」の継承〜千里ニュータウンにおけるアーカイブ・プロジェクトの試み〜
 大阪大学大学院特任研究員 千里ニュータウン研究・情報センター 田中 康裕氏

サトヤマとともに暮らす ‐サトヤマヴィレッジでの実践‐
 株式会社エス・コンセプト代表 馬越 重治氏

 

広場

「広域巨大災害に備えた仮設期の住まいづくりガイドライン」の策定について
 国土交通省中部地方整備局建政部住宅整備課

ドイツの住宅供給を巡る最近の動向 ‐住宅ストックの大型売買(その2)‐
 滋賀県立大学名誉教授 水原 渉氏

 

住宅だより 海外編

‐国際居住年記念基金事業 海外の居住環境改善活動報告‐
 場をつくり、人が育ち成長し合う関係へ そして次世代へつながることを目指した国際協力活動
 特定非営利活動法人新潟国際ボランティアセンター(NVC) 事務局長 三上 杏里氏

 

書評

死なない!死なせない!大震災から家族を守る!
 政策研究大学院大学教授・まちづくりプログラムディレクター 福井 秀夫氏