平成24年9月号

特集/コミュニティの拠点をつくる

 人口減少社会において、コンパクトな都市づくりは既存のインフラの維持管理のためにも、都市を活性化する新たな投資の効率化のためにも、不可欠な要件となりつつある。現在は、高度成長期以降に無秩序に拡大した市街地を日常的な生活が徒歩圏で成立する空間と、これらをネットワークする公共交通によって再編成することが、多くの都市で検討されている。
 ただし、既にスプロールしている市街地をコンパクトな形態に再編成する場合、都市構造の全てを一気に変化させることは不可能であるため、都市全体の土地利用を段階的に変化させなければならない。したがって、コンパクトな都市の再構築においては、その過程のプロセスデザインが最も重要になる。既にいくつかの自治体で取り組みが見られるが、コンパクトな都市形成の最初の段階で取り組むべきことは、どのような地域であっても拠点となるエリアの再生と、農地や緑地・オープンスペースの混在する市街地周縁部の土地利用コントロールであろう。
 2011年5月号の特集のテーマ「農と共生する新しい暮らし」では、後者を想定した住宅地や都市像について検討を行った。これに対し本特集は、前者の拠点となるエリアの再編成の方策について検討することを目的としている。もちろん、これまでにも主に駅周辺の再開発事業や土地区画整理事業等により、拠点の再編や活性化が継続的に取り組まれてきた。しかし、経済状態が低迷し、人口・税収ともに右肩上がりが前提とならない今後の社会においては、従来の事業型・供給型ではなく、各エリアのコミュニティのニーズに応じた需要型の拠点を形成していく必要があるのではないだろうか。
 ひとくちにコンパクトな市街地といっても、そのスケールは地域の特性や拠点の規模に応じて様々に異なる。本特集では、まちづくり・福祉・安全安心等の目的を持つ多様な活動が多層的に存在し、都市を構成する基本的な単位となる身近なコミュニティに焦点を当て、その活動の場や結節点にコミュニティの拠点としてのポテンシャルを見出すことを通じて、人口減少社会における都市形態の再編成に向けた新たなコミュニティの拠点について展望したい。

企画・編集 千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 秋田 典子

 

コミュニティの拠点をつくる
  千葉大学大学院園芸学研究科 准教授 秋田 典子氏

「公共の場」としてのコミュニティ交流拠点
  法政大学法学部教授 名和田 是彦氏

人口減少社会における住宅地の行方
  神奈川県住宅供給公社理事  健夫氏

空き家の解体・除去によるコミュニティの拠点づくり
―福井県越前町のポケットパーク整備事業を通じて―
  立命館大学政策科学部教授 高村 学人氏

地域の再編成と「生活中心地」の明確化
  町田市都市づくり部都市政策課 姫島 友子氏

大規模団地におけるコミュニティの拠点
  千葉大学大学院園芸学研究科修士1年 櫻井 政志氏

被災地におけるコミュニティの形成の特徴と意義についての考察
―大槌町の仮設住宅団地のコミュニティの取組みを中心に―
 東京大学大学院工学系研究科博士課程 似内 遼一氏

再開発事業を通じた新しいコミュニティの拠点の形成
 安田開発且幕ニ部事業課
 淡路町ニ丁目西部地区市街地再開発組合事務局 松本 久美氏

 


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