平成24年5月号

特集/東日本大震災による住まいへの影響と課題

 東日本大震災からはや一年以上が経った現在もなお、復興に向けて不断の努力を続けている皆様に改めて敬意を表します。
 「住宅」では大震災によって生じた住宅に関する問題について、まず被災地の住宅支援として仮設住宅に焦点をあて3月号にて特集しましたが、続く今号では広く住宅を取り巻く環境への影響を取り上げることとしました。
 たとえば基盤の面から見ると、液状化が発生した地区ではその被害が居住機能に影響を与え、資産価値の減少も起きたと思われます。また盛土などを施して造成した宅地の被害も大きなものです。また住宅形式の面から見ると、首都圏では近年タワーマンションが増えてきましたが、ライフラインの断絶やエレベーター停止などによる生活不便などの問題が顕在化しました。住民の防災意識の高まりは顕著であり、非常時の行政との連携などの検討が進んでいます。
 一方で住宅市場への影響を考えると、居住地の選択において以前より防災性能が考慮されるようになったことは間違いないでしょう。たとえば上述のタワーマンションも、忌避されるのではなく耐震性能の高さが評価され、むしろ注目度が上がっているという指摘もあります。
 このような震災後の状況やその後の住宅を取り巻く環境や意識の変化を、本号の特集テーマとしました。本誌でのみならず、今後も継続的に広く議論をしていくべきテーマですが、本号がその一助となることを期待しています。
 企画編集:東京工業大学大学院社会理工学研究科助教 中西 正彦


持続的な復興の取組みと支援に向けて
 東京工業大学大学院社会理工学研究科助教 中西 正彦氏

仙台市における宅地造成地の被害
  山形大学大学院教育実践研究科教授 村山 良之氏

浦安市埋立てエリアの液状化による住宅被害と居住への影響
 明海大学不動産学部教授 齊藤 広子氏

液状化被害からの戸建て住宅地の復旧への取り組みについて
 芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科教授 中野 恒明氏

タワーマンションにおける防災対策の取り組み ー武蔵小杉の事例ー
 NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント専務理事 塚本りり氏

東京・新宿駅周辺地域における地域連携による地震防災対策の取組み
 工学院大学建築学部まちづくり学科教授 久田 嘉章氏

今後のマンション建替えに及ぼす影響
 千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻教授 小林 秀樹氏

東日本大震災被災地における住宅供給の未来像
 日本政策投資銀行地域企画部地域振興グループ課長兼主任研究員 寺崎 友芳氏

選ばれるまちづくりへ 〜千葉県東葛6市にみるホットスポットへの対応を例に〜
 筑波大学客員教授 飯田 直彦氏/千葉大学大学院園芸学研究科准教授 秋田 典子氏


建築研究

建築研究所の最近の取組みより(その5)
既存建築ストックの再生・活用手法に関する一連の研究
 独立行政法人建築研究所材料研究グループ主任研究員 濱崎 仁氏


広場

〜法律入門シリーズ<第10回>〜 公営住宅管理に関する諸課題について(その3)
松田綜合法律事務所 弁護士 佐藤 康之氏

ドイツのエネルギー政策における住宅の低炭素化の役割
三井不動産鰍r&E総合研究所 大竹 喜久氏


住宅だより海外編

エコロジカルな実験的住宅開発プロジェクト「エコ・ヴィーキ」その1
ー笑顔あふれるエコロジー社会ー
 実践女子大学大学院人間社会研究科非常勤講師 宇治川 正人氏

ー国際居住年記念基金事業 海外の居住環境改善活動報告ー
 居住環境改善に係る国際NGOの活動動向 国際居住年記念基金運営委員会事務局


書評

マンションをふるさとにした「ユーコート物語」これからの集合住宅育て
 大阪市立大学名誉教授 住田 昌二氏